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メディア掲載・プレスリリース

2016年11月28日 イーズ共創フォーラム 異業種勉強会:共創事例#02富士通×環境リレーションズ研究所
~「Present Tree」がつなぐ「復興と協働の森」植樹活動(岩手県宮古市)~

それぞれの活動認定NPO法人
環境リレーションズ研究所-「Present Tree」

環境リレーションズ研究所が提供する「Present Tree」は「人生の記念日に樹を植えよう!」を合い言葉に、大切な人や自分自身のために記念樹を植えて、森林再生と地域振興につなげる2005年にスタートしたプロジェクトです。植栽が放棄された人工林、山火事や風倒被害で森林が消失したところ、牧場やゴルフ場の跡地など、樹を必要とする場所にその土地に見合った苗木を植え、都市の人びとに里親になってもらい、苗木を介して縁のできた中山間地域との交流人口を増やすことによって、森だけでなく地域丸ごと元気にすることを目的としています。植栽地は国内外25か所、植栽本数12万5千本、支援者数も累計約379万人までの規模になりました(2016年3月現在)。また、企業の環境・CSR活動の一環としても採用され、これまでにのべ170社が実施しています。

富士通-「バーディforグリーン」

ICT企業の富士通では、グループの理念・指針であるFUJITSU Wayのなかで「社会に貢献し地球環境を守る」を掲げ事業活動を通じてお客様・社会の環境負荷低減への貢献を目指しています。その実践のひとつが2009年からはじめた「バーディforグリーン」です。これは毎年秋に行われる、女子プロゴルフ・トーナメント「富士通レディース(※)」において、バーディ、イーグル、アルバトロス、ホールインワンそれぞれにレートを付け、選手の成績とレートを掛けた合計を金額に置き換え、それを森の整備再生のために寄付し、森林保全に貢献するプロジェクトです。開始当初は熱帯雨林の再生を目的にインドネシアのボルネオ島の活動に活用され、2011年の東日本大震災後からは震災被災地域のひとつである岩手県宮古市での「Present Tree」森林整備再生に移行し、森林保全を進めています。
(※)「富士通レディース」は、1978年にスタートした富士通プロアマチャリティゴルフトーナメントが前身、スタート時の「チャリティ精神」は現在も受け継がれている。今年は2016年10月14日(金)~10月16日(日)開催予定。

共創プロジェクト実現の経緯 
東日本被災地のひとつ、宮古市の復興と森林再生をめざして

岩手県宮古市への移行のきっかけは、環境リレーションズ研究所代表の鈴木敦子さんとの対話からはじまりました。富士通では社会とのより本質的な関わりを求めて、さまざまな分野の有識者を招き、環境ダイログを開催しています。地球温暖化と森林保全がテーマの回に、鈴木さんが参加され、そこで富士通側から「バーディforグリーン」プロジェクトを続けてきていること、東日本大震災の被災地域で活動を行いたいと検討していることをお伝えしました。環境リレーションズ研究所の「Present Tree」は被災地域でも活動をしていること、森林整備再生だけでなく、地元との交流を通じた地域振興を目的としていて、森林整備再生事業は一過性ではないため復興に長く寄り添える、という説明を受け、岩手県宮古市でコラボレーションによる「復興と協働の森」森林再生活動が実現しました。

1本1本に里親の名前が記載された、3,424本もの広葉樹を植樹。

植樹活動は2012年度にスタートし、今回2016年度で4回を実施。毎年の寄付額は「バーディforグリーン」結果、選手の成績によって変わるため、苗木数は若干の変動はあるものの800~900本前後/年で、在来種の落葉広葉樹を植えています。木1本ごとにプレートを付けてナンバー管理し、参加者には里親の証明としてプレートナンバーと個人名を記載した「植林証明書」が発行され、世界に一本の「自分の樹」を持つことができます。

2013年 850本
2014年 850本
2015年 924本
2016年 800本
合計  3,424本

植樹面積は1ヘクタール+α(全体)。しっかり樹として育つように、植樹後10年間地元森林事業者の方々の手で管理、育成されます。「Present Tree」では、保育期間の費用込み(※)の寄付を行う仕組みを採用しているため、地元の林業事業従事者方の雇用支援につながるとともに、森になるまで長期間の成長管理を専門家にお任せできています。

実際の樹の成長は、東北という土地柄、場所が寒い。1年後に植樹されたところをみても、南で育つ樹々と比べれば成長はゆっくり。
(※)4社間(森林所有者、行政、地元の森林管理施業者、環境リレーションズ研究所)での10年間の森林保育管理体制を担保しています。

10年続く、植樹した森へのまなざし 

「Present Tree」のしくみの大きな特徴のひとつに、地元を巻き込んだ10年間の森林保育管理体制の担保があります。
これは、全国で広がる、荒廃林・放置林をはじめとしたさまざまな森の課題の拡大を食い止めるには、森が自立自走できるようにならなければならない、と考えたからです。人口減少・高齢化が進む時代に、人々の関心のなかで、地域の森のプライオリティはとても低い。また、日本の森の約4割をしめる人工林(※)は半永久的に人が手を入れ続けていかなければならないものなので、森の担い手がいなければ、結局荒廃林・放置林を増やしてしまうことになります。
そこで、同社では、北海道大学の教授から、戦前の雑樹林・多種雑多な混合森をめざし、最長でも7年間人間がお世話できれば、生命力があり、自立自走可能な森が実現できることを教えてもらいました。そして、さらに地元との交流・縁を深める緒にもつなげられたら、と考え、長く見守り続けるために必要な期間を10年間としました。10年間あれば、関わる人々が森をつうじて、地元についても見つめなおし、自分たちの自立自走を考えらえるようにという思いが込められています。
(※)出典元-林野庁:都道府県別森林率・人工林率(平成24年3月31日現在)

被災地支援と森林再生、双方に貢献する 
地域の事業会社と一緒に企画するオリジナル・ツアー

社員の環境意識高めながら震災被災の地域貢献が行える機会は多くありません。事務局は多くの参加者を募るため、富士通の全社員とその家族、また、グループ会社にも声をかけていきました。企画にあたっては、「本業で利益をあげるお手伝いができれば」と考え、ホテル、バスやツアーガイドまで地域事業社に依頼することに決め、地域の事業社と直接対話をしながら、ツアーの行程を決めていきました。この対話がきっかけとなり、ガイドブックでは知ることのできない情報や地域で働く方々の気持ちに触れる機会につながり、オリジナルの旅行プログラムができあがりました。

また、宮古市、地元森林事業関係者と一緒に、富士通の岩手支店(盛岡市)メンバーが植樹活動の運営サポートをしたり、夕食を兼ねた懇親会に宮古市や地元森林事業関係者に参加いただくなどの交流を重ね、自治体、地域関係者と企業が新たな関係性を築くことにつながっています。

「学ぶ防災」「わかめ加工」など、地域視察プログラムも

植樹活動と合わせて、「学ぶ防災」への参加、地元「真崎わかめ」の加工作業体験などの地域視察プログラムを取り入れています。津波の恐ろしさと防災の大切さや復興に向けた歩みを地域の方々から直接うかがい、地域の産業を体験することで「いま自分たちに何ができるか」、「次世代のために何を伝え残すべきか」について、じっくり考え、気づきを得る機会につながっています。

また、同じ富士通グループではあるものの、普段の業務でかかわる機会はありません。こうした機会に新たな仲間と知り合い、心を合わせて行動をともにすることによって生まれたつながりは、今後、組織・地域を横断した新たな化学反応を起こす可能性も秘めているといえるでしょう。

プロジェクトの意義・成果

「Present Tree」を主催する鈴木敦子さんに、この共創の成果をうかがいました。 「もともと息の長い活動にならざるを得ない森林再生事業を、長期にわたる東北復興のためのフィールドとしてなんとか活用できないか?との思いからスタートしたのが、この宮古市をはじめとする復興支援型の「Present Tree」です。被災地の「Present Tree」の森にたくさんの人の流れをつくることが、私たちのミッションです。
時間とともに、現地入りするボランティア達がどんどん引く中、富士通さんはそれに代わるように、過去4年間、毎年沢山の社員&社員家族を連れてきてくださり、地元からは大変喜ばれています。」

震災復興5年間が経ちますが、未だ17万人が避難しているといわれています。生活再建や産業復興に向けて、まだまだ頑張らなければならないエリアはたくさんあります。組織としての継続的な被災地との交流は、真の意味で復興に寄り添うこととなるでしょう。

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